Calibration

投影補正調整技術

ドーム投影やプロジェクションマッピングなど、平面ではないスクリーンにプロジェクターで映像を投影すると歪んで見えてしまいます。こうした投影像の歪みを修正して正しく見せるための変形を「歪み補正」と呼びます。複数のプロジェクターを使ってひと続きの大きな映像を投影したり、重ねて投影して映像を明るく見せたりする際にも歪み補正が必要になります。また、投影像同士が重なった部分の輝度を調整して映像全体を均一な明るさにするための補正が「ブレンディング」です。こうしたプロジェクションのための映像補正をまとめて「投影補正」と呼びます。複数のプロジェクターによる映像の投影では、環境に応じたこれらの補正を行うための「投影補正データ」を計測することが必要になります。 弊社では、現場の限られた時間や条件のなかで必要とされる技術、まさに即戦力となる投影補正調整技術を開発し、提供しています。

手動投影補正

Amaterasに搭載している手動補正機能は、豊富な現場経験にもとづく「あの手この手」の実践的な投影補正調整テクニックを満載しています。

スプラインワープ補正

歪み補正の調整方法として一般的な、制御点の位置を調整して映像を変形させるテクニックです。制御点の数を任意の数だけ増やして細かく変形ができるほか、調整を続けていくうちに複雑に絡み合ってしまった制御点だけをリセットする「リメッシュ」機能を備え、どこまでも歪み補正を追い込んでいくことができます。この機能がどれだけ重要なことかは、短時間でやり直しのきかない現場調整の経験者ならハッキリとわかるはずです。また投影画面上(どこに映像を配置するか)と映像ソース上(どの部分の映像を使うか)の両面から独立した歪み補正が行なえるため、様々なアプローチで投影補正調整を行なうことができます。

スプラインワープ補正の使いどころ

・単純な映像の部分切り出しや変形調整
・自動投影補正や他の投影調整結果の修正

ピンワープ補正

平面スクリーンやドームスクリーンなど、幾何学的な形状のスクリーン上に正確な投影を行なう必要がある場合には、ピンワープ補正を使用します。このピンワープ補正では、映像をスクリーン上に「ピン」で留めていくように、レーザーマーカーや計測によって調べた位置に映像をマッピングしていきます。スプラインワープ補正の制御点と異なり、気になる部分に好きなだけピンを追加して細かく補正することができ、またピンで留めた映像はあとの調整作業の影響を受けず常にその位置にとどまるので、かけた時間の分だけ調整制度を向上させていくことができます。

ピンワープ補正の使いどころ

・セオドライトやレーザーグリッド、光学投影機などの子午線で正確に墨出しされたドームでの投影調整
・タイルやレーザー墨出し器などで正確に位置決めされたスクリーンへの投影調整
・グリッドを重ねながらの正確なスタック投影調整

マーカーによる特徴点の記録

正確な投影補正調整を行なうためには、メジャーやセオドライトなどでスクリーン上にあらかじめ均等な分割線を計測しておくことが有効です。この計測の際に、スクリーンにペンやテープなどで直接目印を付けず、プロジェクション映像上に「マーカー」を記録していくことができます。手軽にいくつでもマーカーを記録し、投影調整が終われば一括で非表示にすることができます。ピンワープ補正の場合は、マーカーの位置にピンがスナップ配置できるのでさらに効率的なうえ、あらかじめ十分な数のマーカーだけ記録しておけば実際に暗い環境で投影像を見ずとも、ツールの画面上で投影調整作業を続けることができます。

3Dモデルによる投影補正

複雑な立体形状や、立体物を包み込むような周囲からの3Dマッピングを行うテクニックです。スクリーンとなる物体の形状をUV座標付きの3Dモデルとして用意し、仮想的なプロジェクター投影のシミュレーションを行うことで歪み補正を行います。若干の物体形状やプロジェクター位置の誤差はスプラインワープ補正で修正します。コンテンツも3Dモデル表面に焼きこむ手間がかかりますが、いざ投影時にプロジェクターの台数や置き方がどう変わっても対応できる唯一の方法です。

インタラクティブなエッジブレンド

プロジェクターを複数台並べた時のエッジブレンドは、インタラクティブにブレンド幅やガンマカーブを調整して即座に実現することができます。映像が複雑に重なったマルチプロジェクションでは、任意形状のブレンドグラデーションを追加したり、歪み補正の形状に応じて「自動ブレンディング」計算を行なうことができます。また、いったんブレンド調整の結果をグレースケール画像として書き出し、外部ウールで加工して再び読み込む「オーバーレイマスク」機能もあります。

インタラクティブなマスク描画

投影調整でスクリーン外に漏れた映像や、スクリーン以外の余計なものに投影される映像を切り取る「マスク」作業を行なうことができます。ペイントツールのような直感的な使い勝手で、投影面上に絵を描くようにマスクする範囲を指定することができます。複数台のプロジェクター映像をエッジブレンドせず正確に付き合わせるための投影形状作成にも有効です。

自動投影補正

カメラによる投影パターンの自動認識技術を使って、平面や円柱状、ドーム上などのスクリーン用の投影補正データを高速かつ高精度に生成します。プロジェクターの台数や種類によらず、プロジェクターで映像が投影されている領域全体に渡ってひずみ無く均一な映像の投影を可能にします。ピクセル単位の精度でのスタッキング(重ね投影)により、高輝度化、高精細化、パッシブ立体視や冗長性の向上にも利用できます。
※自動補正技術は使用される現場ごとにライセンス費が発生します。自動補正技術の利用可否が現場条件によるため、必ずあらかじめご相談ください。

自動投影補正のメリット

・時間の限られた仮設現場でのドーム投影
・舞台袖から役者の影を出さずに背景を覆うような超斜角投影
・投影距離が十分に無い空間での複雑な交差投影
・8Kスタック投影などのピクセル単位でのスタッキング調整
・施設担当者自らがいつでも最適な投影状態に再調整できる常設シアターの実現

映像再生しながらの投影補正調整

通常、投影補正調整はグリッドパターンやスクリーン形状にあったテンプレート画像を使用して行ないます。しかし非常に時間の限られたイベント現場では、完全な投影補正調整を目指すよりも、実際に上映する映像が不自然に見えないことを目標にするべきです。Amaterasは投影補正調整機能と高解像度動画プレーヤーが一体化したアプリケーションであるため、上映する映像を実際に再生しながら気になる部分だけを効率的に修正していくことができます。

フレキシブルな投影機材構成

大規模なマルチプロジェクションでは、安定性を高めるために少ない数のメディアサーバから映像を送出したり、逆に高解像度の映像を扱えるよう複数台のメディアサーバを使って負荷を分散したりといった、状況に応じたシステム構築が必要になります。Amaterasを使うことで、このどちらにも柔軟に対応して同じ使い勝手で投影補正調整を行なうことができます。ネットワーク越しの複数のメディアサーバを使用したマルチプロジェクションでも、手元の作業用ノートパソコンからすべて遠隔操作することができます。